家と暮らしのお役立ちコラム
第三回 働き方と子育て
北欧フィンランド、ヘルシンキで暮らしている大村裕子です。
第三回目はフィンランドの働き方と子育てについてです。
共働きが普通のフィンランド
フィンランドでは、ほとんどの女性が働いていると感じます。フィンランドの15~64 歳の就業率(2018年8月)は、女性70.8% 男性 74.4% で、男性と女性でほとんど変わらないのです。
また男性も女性も日本に比べて、残業しないのが普通です。もちろん仕事が忙しくて残業する日もありますが、その分は他の日で調整します。男性も子育てを一緒にするので、女性が働きやすいのではないかと思います。
ヘルシンキ近郊の首都圏では、公共交通機関による通勤時間は平均34分です。多くの道路には自転車専用のレーンがあり、自転車で通勤している人も多いです。自宅と職場が近いのも共働きがしやすい一つの理由です。
約80パーセントが取得、父親休業
私が以前働いていたフィンランドの会社で、父親休業を取った同僚がいました。日本で働いているときは身近にいたことがなかったのでとても驚きました。
フィンランドでは父親休業というのがあり、子供が2歳になるまでに、合計54日取得できます。そのうち18日(3週間)は母親と一緒に取ることができます。はじめの3週間については、約80パーセントの父親が取得しています。
ベビーカーを押す男性にお話しを聞きました。
「私は父親休業中です。子供は男の子で、今ちょうど1か月になるところです。今回3週間とって、またしばらくしてから2,3か月とるつもりです。多くの人が初めの3週間しかとらないのですが、私はまたとります。今の父親休業は良い時間ですし、たぶんこの後の父親休業はもっと良い時間になると思っています。」
保育園が充実
フィンランドでは0歳から6歳までが通うパイヴァコティPäiväkotiとよばれる、日本の幼稚園、保育園にあたる施設があります。パイヴァとは昼間、コティとは家の意味です。フィンランドでは希望すれば保育園に通える権利があります。家の近くの保育園に入れない場合はありますが、必ず保育園には入れるようになっています。
インタビュー フィンランドの働き方と子育て
フィンランドの建築家、クラウディア・アウエル(Auer& Sandås architects 代表) にフィンランドの働き方と子育てについて話を聞きました。男の子1人、女の子2人を持つお母さんです。
― フィンランドの子育て環境についてどう思いますか?
アウエル 私は3人の子供がいますが、キャリアをあきらめることなく仕事を続けていくことができました。フィンランドだから可能だったと感じています。国によっては難しいのではないかなと思います。フィンランドの公立の保育園はとても質が高いです。安全で健康に配慮されているので、安心して預けることができました。フィンランドの女性は、子供のために仕事を諦める必要がないのです。
また赤ちゃんのための育児パッケージという、フィンランドならではの制度があります。日本の方も興味を持たれるかと思いますよ。
-育児パッケージとはどんなものですか?
アウエル 新生児に必要な洋服、下着、手袋、帽子、靴下、毛布、タオル、寝袋などが揃っている箱です。デザインもよく、質もとても良く、盛りだくさんな内容です。この箱そのものが、新生児のベットにもなります。国から育児パッケージをもらうか、お金をもらうか選べるのですけれど、私の子供達は3人とももらいました。
(毎年デザインが変わります。2020年のデザインはこちらから見ることができます。
https://www.kela.fi/web/en/maternity-package-2020 )
― ご主人は父親休業をとりましたか?
アウエル もちろんです。3人の子供たちについてそれぞれ約3週間とりました。フィンランドではごく普通です。男性が父親休業をとると聞いて、キャリアを考えると辞めた方がいいという人はいないと思います。父親にとって子供と一緒にいることができて手当もありますし、母親にとっても一人でないので安心できます。
― これまでたくさんの学校や保育園を設計していますね。何か一つ紹介してください。
アウエル これは2014年に完成したスールペルト保育園です。2008年に行われたオープンコンペで1位になりました。サステナビリティに配慮されたプロジェクトでパッシブハウス認証を取得しています。暖房には地中熱ヒートポンプを使っています。フィンランドで初めての公共建築でのパッシブハウスです。
― デザインはどんな特徴がありますか?
アウエル ここは100人強の子供が過ごす初めての家以外の場所です。子供が保育園を自分の場所と感じられることが大切です。「楽しさ」、「遊び」、「自分の場所がここであると感じられること」、これらを調和させたいと考えました。
外観はおもちゃ箱をイメージしています。黒の枠がおもちゃ箱で、その中にオレンジやイエローのおもちゃが入っています。この黒い大きな枠がいわばステージで、ここで子供達の生活が繰り広げられます。大きくかけられた一つ屋根の下には、子供達とここで働く人たちがいます。子供たちはこの屋根の下にいる人たちは仲間で、自分はここの一員なのだと感じることができます。
また室内ではグループごとにそれぞれ色を分けて、自分たちの場所をわかりやすくしています。例えば、オレンジのグループの子が使うロッカー、キッチンの扉、ドア、トイレ、壁のタイルなどがオレンジになっています。
仕上げには木を多く使っています。木はストレスを減らせる効果があるという研究結果もあります。音にも配慮して静かで落ち着ける空間にしています。
また屋根にある丸い穴をあけて、室内からも空が見えるようにしました。雨も雪もそこから入ってきてます。雪が降ればバルコニーに積ります。そんなお天気も生活の一部なのです。
参考
https://toolbox.finland.fi/life-society/work-live-finland/
https://toolbox.finland.fi/life-society/finfo-gender-equality-in-finland/
https://finlandabroad.fi/web/jpn/ja-finnish-childcare-system