家と暮らしのお役立ちコラム
第四回 夏の過ごし方、サマーコテージ
北欧フィンランド、ヘルシンキで暮らしている大村裕子です。
第四回目はフィンランドのサマーコテージライフを紹介します。
4週間の夏休み
フィンランドの夏はとても過ごしやすいです。ヘルシンキの7月の平均最高気温は22度、8月は20度です。25度を超える日はほとんどありません。湿度は日本に比べると低くて、からっとしています。家には冷房がないのが普通です。7月は日が沈むのは22時半ころで、明るい夜が続きます。
フィンランドの夏を一番楽しめるのは7月で、多くの人が7月に夏休みを4週間取ります。フィンランドに来た当初は、大人が夏休みを4週間とれるなんて驚きました。建築業界では、7月を完全に休みにするオフィスも多いです。業種によってはシフトで6月や8月に休みを取る人もいるようです。
サマーコテージとは
フィンランドの夏の典型的な過ごし方といえば、サマーコテージです。サマーコテージとは普段住む家とは別のセカンドハウスのことで、主に夏に利用します。サマーコテージは森や湖、または島など自然豊かなところにあります。そしてサマーコテージとは別棟で必ずといっていいほどサウナがあります。サウナ小屋は湖や海のすぐ近くに建てられていて、サウナで温まったあと泳げるようになっています。
フィンランドには約50万のサマーコテージがあって、約82万人の人が自分で所有しているか家族が所有しています。フィンランドの人口は約550万人です。
友人に「夏休みは何をしていた?」と聞くと 「2週間サマーコテージで過ごしてリラックスできた。車で4時間くらいかな。」「親のサマーコテージのメンテナンスをして過ごした。大変だけどその後のサウナは最高。」「うちの家族や親戚はサマーコテージを持っていないのだけど、2回それぞれ別の友達のサマーコテージで過ごしていた。」などと返ってきました。自宅から車で2-3時間の距離であれば、夏休みだけでなく週末にも行く人も多いです。
薪であたためるサウナ
私はサマーコテージを持っていませんが、何度か友人のサマーコテージに招待してもらったことがあります。
サウナはフィンランド人にとって欠かせないもので、一般住宅にもサウナがあることが多いです。一般住宅のサウナは電気で温めますが、サマーコテージでは薪を燃やして温めます。一般住宅のサウナでは隣にシャワーがありますが、サマーコテージではないことが多いです。
まず薪を割ります。薪はサウナを暖めるのと、お湯を作るのに使います。シャワーの代わりに湖からポンプで水を貯め、それを薪で温めてお湯を作ります。ポンプがなくて湖から水をバケツで汲んでくることもあります。薪割りをしたり、薪に火を付けたり、お湯を作ったりしていると、昔の電気がない生活に戻った気がします。(もちろんその時代には生きたことはないのですが。)
薪サウナは木の香りがして、電気サウナに比べてよりじんわりと温まる感じがします。サウナで温まったあとは外で涼んだり、湖に飛び込んだりします。そしてまたサウナで温まります。
便利な生活やパソコン、仕事から離れて、自然の中でシンプルな生活をする―これがとてもリフレッシュできました。都会のサウナであれば、スイッチを入れると用意ができて、水もお湯ももちろん使いたい時にすぐ使えます。でも時間をかけてサウナを準備することが、こんなにリフレッシュできることだとは知りませんでした。多くのフィンランド人がサマーコテージで過ごす理由が少しわかった気がします。
インタビュー フィンランドのサマーコテージの過ごし方
私のサマーコテージ体験を紹介しましたが、フィンランド人に聞いてみたいと思います。フィンランドの建築家、クラウディア・アウエル(Auer& Sandås architects 代表) にサマーコテージについて話を聞きました。男の子1人、女の子2人を持つお母さんです。
―日本人から見ると夏休みが4週間もあるのは驚きます。フィンランド人は4週間の夏休みをどう過ごすのですか?
アウエル フィンランドでは屋外で快適に楽しめる期間は、1年の中で約2、3か月と大変短いです。ですから私は7月は自然を思う存分楽しみます。
7月に太陽の光をたっぷりと充電して、長く暗い冬の季節を乗り切る準備をするのです。サマーコテージで過ごすのは、とても人気のある夏の過ごし方です。
―サマーコテージでは何をして過ごしますか?
アウエル サマーコテージでは、屋外で自然とかかわることが欠かせません。ほとんどの場合サマーコテージとは別に、水辺にサウナ小屋があります。私は泳いだり、ボートを漕いだり、セーリングをしたりするのが好きです。フィンランド人の毎年の夏の恒例といえば、魚釣りや自然の中でのベリー摘みですね。ハンモックや桟橋で、読書をするのも楽しいです。あと多くのサマーコテージには、アウトドアキッチンがあります。
フィンランドでは、キリスト教の前はシャーマニズムがありました。でも何というかサマーコテージは、今でもフィンランド人と自然の強いつながりを表していると思うのです。トーベヤンソン作のムーミンのお話の中でも、フィンランド人の自然との結びつきが見られます。サマーコテージでは人間は自然の動物で、生活はとても自然に近いのです。生活はとてもシンプルで、理にかなっている。フィンランドの都会の現代デジタル社会とは正反対です。
―サマーコテージはフィンランド人にとってどんな場所ですか?
アウエル 家族の人数が変わると、家は住み替えることがあるかもしれません。でもサマーコテージは、親から受け継いでずっと変わらないケースが多いです。私にとってサマーコテージは、子供のころから変わらない大切な場所です。
最近はとても高級なサマーコテージもあります。都会の住宅と同じようにハイテクな設備があるのですが、海や自然もすぐそばにあります。コロナ危機の中で興味深い現象が起こっています。リモートワークであれば、サマーコテージで仕事と生活ができるのです。急に都会生活はベストな選択肢ではなくなったのです。
また海外旅行も行けなくなりました。多くの家族が70年代と同じように夏休みを過ごしています。2020年サマーコテージはとても人気になり、価格が上がっているようです。
参考
https://toolbox.finland.fi/life-society/finfo-facts-about-finland/