家と暮らしのお役立ちコラム
【断熱と健康 2】通年で「健康な住宅」を創る「断熱」という基礎技術
住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。
この8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。
「健康な住宅」には一人ひとりの幸せを叶えるために欠かせない基本的な住性能と、時とともに変化する人生プランに合わせた、持続可能で柔軟な建築デザインの両立が不可欠です。
とりわけ「断熱」は、健康リスクや健康寿命の長短とも直結する基本性能ですから、正しい知識を身につけておくことが大切だと考えています。ここでは「断熱」を強化することの意味について、もう一度考えていきましょう。
(写真)寒い冬も、暖かな暮らしを支えてくれる「断熱」技術。
「健康」と「室温」には、密接な関係がある。
イギリス保健省は、健康リスクと「室温」との関係を科学的に調査して公表しています。
健康を維持するために推奨される、冬の「室温」は21℃!
家中が、いつでも21℃以下にならないよう維持することが推奨されています。
また、室温が低くなるにつれて健康リスクは急激に増大し、室温が16℃以下になると呼吸器疾患や心疾患などのリスクが上昇していくことを調査結果は示しています。
室温を維持することは、生命を維持することと直結しているという事実を忘れないように生活していきたいものです。
「健康リスク」と「光熱費」を抑えたいなら、まずは「断熱」強化を
室温低下による健康リスクの増大を抑え、同時に光熱費を低減していくためには壁や天井、窓ガラスなど、建築躯体の「断熱」性能を強化していく必要があります。
世界中の積雪寒冷地域に建設されている住宅は、いずれも「断熱」性能が非常に高く、特に北欧やドイツ、スイスなどの高断熱住宅は、先進高性能住宅とも呼ばれています。
「断熱」性能は、使用する断熱材の種類と厚さによって決まりますが、壁や天井、床下などに施工される断熱材は、竣工時には見えなくなってしまいます。
言い換えれば、竣工してから「断熱」性能を強化することは、工事も難しく、費用もかさむということです。住宅を建設する専門家に相談しながら、適切な「断熱」性能を事前に見つけ出し、しっかりと「断熱」工事を実施したいものです。
(写真)壁や天井に施工される断熱材は、後から追加施工することが難しい。※現仕様とは一部異なります。
「新省エネ基準」と、室内の「快適さ」、「健康リスク」との関係
下図は、暖房時に室内で感じる「体感温度」と外気温度の関係を示しています。
「体感温度」は空気の温度だけでなく、周囲の壁や天井・床、ガラス窓の表面温度の影響を受けるので、暖房で空気温度を22℃に保っていても外気温度が低下してくるにつれ躯体の表面温度が低下して、やがて居住者は「寒さ」を感じ始めることになります。
1, 2地域(北海道に相当)の断熱基準に適合する住宅では、暖房した室内にいても外気温度が-8℃以下になると「寒さ」を感じ始めます。また東京以西の5〜7地域の基準では外気温が5℃になると、健康の目安となる室温21℃を維持できなくなります。
「断熱」性能を高めていくと表面温度は室内の空気温度に近づき、UA値が0.37[W/(m2・K)]まで断熱強化した住宅では、外気が-15℃になるまで「寒さ」を感じることはありません。「断熱」強化によって、真冬でも快適な室内環境を創ることが可能になるのです。
冬でも活動的な生活を維持するためには、まず「断熱」強化を!
家の中が「寒く」て、こたつやストーブにしがみ付いていたくなるような住宅では、屋外で活発に運動をしようという意識が、なかなか芽生えてきません。
しっかりと健康温度が維持されている住宅だからこそ、散歩や屋外でのスポーツ、イベントなどに出かけてみようと、アクティブでいられるのです。
しっかりとした「断熱」は冬の暮らしをより活性化して、「冬を楽しむ」というライフスタイルを定着させてくれることでしょう。一年中、いきいきと活動的であるためにはまず住宅の「断熱」性能の向上が不可欠です。
生活の「快適さ」や「活性化」はもとより、「結露」の発生、「光熱費」の上昇という冬の悩みを一気に解決してくれる有効な技術は「断熱」をおいて他にないのですから。
(写真)「高断熱」が活性化した人生には不可欠。(設計・施工:北洲ハウジング)