家と暮らしのお役立ちコラム

【壁と空気質】新鮮で清浄な空気を胸いっぱい吸い込んで、リフレッシュするために。

住宅は一度建てたら簡単には壊せないもの。途中でリフォームもできますが、費用と手間がかかります。新築時に、快適性を”建築のチカラ”=8つの性能で叶えることが、いつまでも変わらない安心につながります。

今回はこの8つの性能を「断熱・気密・遮熱・蓄熱・空気質・換気・調湿・安全」に分けて、わかりやすくお話します。

⻘葉が生い茂る森を散歩すると清々しい空気に包まれて、心身ともに癒されるものです。
樹上生活者だった我々の始祖を顧みるまでもなく、我々の健康にとって「空気」が重要な役
割を果たしていることは言うまでもありません。

 

 

一方で、室内の空気は人間の活動によって常に汚染され続けていますので、上手に換気を行
って、快適な空気環境を維持する必要があります。

 

今回は、人間の健康と「空気質」の関わりについて考えていくことにしましょう。

 

 

(写真)清浄で清々しい空気に包まれて⽣活するためには、住宅にも⼯夫が必要です。

 

 

無意識のうちに取り込んでいる「空気」の量は、⽔や⾷料よりも多い!

 

⼈間は⽣命活動を維持するために、外部からエネルギー源となる⾷料や⽔、空気などを取り
込んで⽣活しています。現代社会では、⾷料や⽔の質が健康に及ぼす影響について、科学的
な知⾒も蓄積され、摂取する⾷料や⽔にこだわる⽅も、⾮常に増えてきました。

 

ところが、⾷料などよりも摂取量が多い「空気」の質を意識しながら⽣活するという⽂化が、
⽇本ではあまり根付いていないことは、専⾨家として⼤変残念です。

 

 

住宅の外部の空気「外気」も、清浄であるとは限らない現代社会。

室内の空気環境は⼈間の活動によって常に汚染され続けています。

 

呼吸によって酸素は消費され、⼆酸化炭素の濃度が増加するだけでなく、アルデヒド類など
の有害物質や臭気、埃やダニ、微細な粉塵などが⽣活と共に常に増加して、最悪の場合には
健康被害が⽣じることも少なくありません。

 

家庭で使⽤されている換気システムや空気清浄器の中には、室内の微粒粉体を吸着するた
めのフィルターを備えたものも多く、⽬的に応じて⾼性能なフィルターを設置することが
できる製品も⾒かけるようになりました。

 

 

また、ウィルスの感染症対策として、空気中のウィルスに紫外線などを照射して不活性化す
る機能を持った空調・換気システムも、開発されて設置事例も増えてきました。

 

 

 

 

意外と知らない、「壁」が原因となるホコリの⾶散と循環メカニズム。

 

⽇本の住宅では、壁の表⾯仕上げ材として塩化ビニール製の「ビニールクロス」が、幅広く
利⽤されています。安価で⼯業化しやすく、表⾯のエンボス加⼯によってデザインも豊富に
提供できることなどが、その理由として考えられます。

 

塩化ビニールは防⽔性が⾼い⼯業材料ですが、電気絶縁性にも優れ多特徴を持ち、電気コン
セントやプラグなど、種々の電気製品にも使われています。

 

⼀⽅で、絶縁性が⾼い物質は表⾯に静電気を帯びやすい性質があり、これが室内の微細な埃
を除去しにくくする原因ともなっているのです。エアコンの空気流などによって静電気を
帯びた壁には空中に浮遊している粒⼦が付着し、粒⼦同⼠が結合して重くなると壁から剥
離して、床へと落下します。落下した粒⼦は掃除機やエアコンなどの気流で再度拡散され、
再び壁に吸着して室内に滞留し続けることになると⾔われています。

 

 

(写真)ビニールクロスが静電気を帯びると、部屋のホコリを吸着しやすくなる。

 

 

天然素材の「塗り壁」は、静電気を帯びにくいので、ホコリもつきにくい。

⽯膏や⽯灰、珪藻⼟などの天然素材を主成分とした建築⽤の「塗壁左官材料」は⼀般的に絶
縁性が低く、静電気を帯びる可能性が低い材料と⾔えます。

 

さらに⼟蔵などで使⽤されている漆喰の例を挙げるまでもなく、天然の左官材は湿度の調
節や消臭などにも効果があることから、近年では健康的な室内環境を創⽣する機能建材と
して「左官材」に注⽬が集まるようになってきました。

 

さらに⾼性能な塗壁左官材料の中には、抗菌・抗ウィルス剤を配合した製品も上梓されてお
り、新型コロナ禍の中で急増している⾃宅療養患者のための療養環境の創⽣・維持にも、期
待が⾼まるようになってきました。

(写真)抗菌、抗ウィルス性能を持つ、「⾼性能左官塗り壁材」の表⾯デザイン。

 

 

空気の質にこだわって、健康的な室内環境を創る時代です。

花粉、PM2.5や⻩砂、感染性の⾼い新型ウィルスの出現など、我々を取り巻く空気環境は、
健康リスクを常に意識しなくてはいけないレベルにまで悪化しているのが現状です。

 

室内でキレイな空気を深々と吸い込み、健康で創造性にあふれた⼈⽣を送っていただくた
めには、室内の「空気質」にもこだわる時代になってきたと⾔えそうです。

 

新築住宅の設計段階にはもちろん、既存住宅のリニューアル時にも、室内の「空気質」のあ
り⽅にも注意を払っていきたいものです。

 

(写真)天然素材に包まれた、健康環境で過ごす豊かな⼈⽣。

 

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